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ブランドアンバサダー エイドリアン・バリンジャー氏、エベレスト&チョ・オユーの登頂成功

 2018年5月、ファーブル・ルーバ ブランドアンバサダーのイギリス人山岳ガイド、エイドリアン・バリンジャー氏はわずか1か月の間にチョ・オユー(世界第6位)とエベレスト(世界最高峰)を連続で制覇しました。その偉業を支えたのは、世界で初めて高度9,000mを測定できる機械式腕時計レイダー・ビバーク 9000です。 以下に、エイドリアン・バリンジャー氏が今回の挑戦について振り返ったレポートの日本語訳を掲載します。 臨場感あふれるレポートをお楽しみください。



バリンジャー氏のレポートより引用(日本語訳)

「何事に対しても計画は立てられるが、エベレストがエベレストであることは変わらない」。私にとって11回目となった世界最高峰への挑戦から言えることがあるとすれば、これに尽きます。天候も、チームの能力も、私が所属するアルペングロー探検隊の後方支援もすべて順調に進み、完璧な登頂が実現するかと思われたシーズンでした。しかし実際は、予想外のトラブルが起こり、もはや生き延びることのみしか考えられない状況に陥りました。


 順を追って説明します。


 私のチームの今年(2018年)のゴールは、1ヶ月かけずに8,000m峰を2つ制覇することでした。 そこで、私たちは世界第6位の標高8,188mのチョ・オユーからスタートしました。私自身、チョ・オユーを二度登頂し、またスキーで下りたこともありましたが、今回はなんだか違和感がありました。今シーズンは山に30人程度しか登山者がおらず、ラピッド・アセント・システムのお陰で高所順応済みの私たちがベースキャンプに到着した際、まだ誰も登山を始めていなかったのです。しかし、私たちにはエベレスト横断まで1週間しかなかったので、突き進むことにしました。


 僅か数日間で、私たちは山の6,400mと7,200mの2地点でキャンプを設置することに成功し、ロープを固定する大仕事を始めました。時折強風や嵐が生じる中で、チョ・オユーの開けた勾配のどこにキャンプを設置すればいいかを確認するために、ビバーク 9000は必要不可欠な存在でした。ヒマラヤ山脈の登山は、高度が全てなのです。高度さえわかれば、自分の所在地がわかりますし、どれくらいの道のりを進んできたのかもわかります。ここでは、距離という考え方ではなく、高度のみで考えます。


 キャンプが適切な場所に設置され、安定した気圧計(こちらも腕に着けたファーブル・ルーバ「レイダー・ビバーク 9000」に内蔵されている)のお陰で天候も予測できたため、私たちは一刻も無駄にせず、5月6日に山頂を目指しました。これは8,000m峰ではかなり早いタイミングでした。3人の登山メンバーと2人のガイド、5人のシェルパで構成された私たちのチームは2つ目のキャンプを午後11:30に出発し、後に他の登山者たちも使用することになるロープを固定しながら登りました。申し分の無い静かな夜でした…高い高度において、ジェット気流が暴れる音が聞こえていたことをのぞいては。山頂は難しいコンディションであるのは覚悟していましたが、私たちは何が待ち構えているのかを窺いながら、とにかく登り続けました。


 残り30mまでは理想的な登山でした。チョ・オユーのまさに山頂だけがジェット気流にさらされていたのです。山頂の手前で私たちは一旦足を止め、自らを奮い立たせ、ダウンのジッパーを首まで上げ、山頂まで急ぎました。私たちはおよそ40分間風にさらされました。それだけですでに限度を超えていました。山頂では1枚の写真を撮るための数秒だけ過ごし、ビバーク 9000で高度を確かめました(本当に正確な高度を表示してくれました)後は、凍傷やそれ以上のことを恐れ、すぐさま下降を始めました。運が味方をしてくれ、本当に特別な登頂となりました。


 しかし、それは今回の挑戦のほんの始まりに過ぎませんでした。私たちはその後2日間を山の掃除(ゴミや汚物、機材の処理)に費やし、車で5時間足らずのエベレストへとギアを入れ替えました。私たちがチョ・オユーで経験した強風は、更に標高の高いエベレスト(8,848m)を直撃し、山頂から遥か下の方の環境にも渦巻くような風や雲をもたらしていました。それでも、運はまだ私たちの味方をしてくれていました。私たちがベースキャンプに到着すると同時に、ジェット気流は北へと移動し、エベレストはかつてない程高気圧と弱風の状況を迎えていたのです。


 ここでも、一刻も無駄にはできません。通常エベレストは65日間以上をかけて登頂しますが、私たちは一気に6、7日間で達成できるのではないかと考えました。そして私たちは、5月10日にベースキャンプを後にしました。頂上に至るまでに、3つのキャンプを新たに設置して行く計画でした。チーム全体が強い気持ちを維持している状態でしたし、アルペングロー探検隊がすでにテントと酸素ボンベを山に用意してくれていたおかげで、私たちの荷物は比較的少なくてすみました。私たちは7,700m地点に設置したキャンプ2を午後11時に出発し、キャンプ3は飛ばして、山頂までの1,100mをノンストップで一気に登る計画で進みました。


 あと少しでした。8,600m地点までは完璧な天候で、チームの誰もが山頂に立てることを確信していました。でもその時、エベレストではあり得ないことが起こるということを私たちに思い出させました。8,600mを超えると、酸素システムが致命的なまでに機能をしなくなりました。ボンベとマスク間の気圧を低下させる調整弁が破裂し、1本で約4時間酸素を供給してくれるボンベが1分もしない内に空になり、ジェットエンジンのような音を立て、間欠泉のように噴射しながら飛んで行ってしまったのです。エベレストを無酸素で登頂したことのあるクライマーは、2017年に成功した私を含めほんの僅かしかいません。無酸素登頂のためには、全く異なる高所順応のスケジュールを要します。私たちチームにとって、酸素を失うことは大事件でした。体の力や認知能力を失い始めるまで数分しか猶予が無かったのです。45分の間に13個の酸素供給機器を失った私たちは、“デス・ゾーン”と呼ばれる8,000m以上の地帯から必死で下りなければなりませんでした。私のチームメート達はそれぞれが有する能力と力を巧みに駆使し、全員が無事に下りられるよう互いにできることを尽くしました。

 アドバンスド・ベース・キャンプ(ABC)に戻った私達は、納得していませんでした。怪我無く帰ってこられたことは幸運だったと感じていましたし、精神的にも体力的にも疲れ果てていました。しかし、登頂を妨げたのは機材の故障だったということも理解していました。チームのシェルパとも話し合い、もし天候が予測された通りに持ちこたえ、ルート上の全てのキャンプを利用しなくても(キャンプに燃料や食料、酸素を補充する時間は残されていなかった)山頂を目指せそうであれば、二度目の挑戦も可能であると判断しました。


 私たちは新しい酸素供給機器と酸素ボンベを集め、36時間という短い休養の後、また立ち向かったのです! まずはABCからキャンプ2へ直接進み、そこで6時間程水分補給と食事のために過ごし、そして山頂へと向かいました。またしても天候は完璧でした。今回は登山ルートに私たちの他には誰もいませんでした。世界最高峰を私たちだけが目指していたのです。


 私のビバーク 9000の赤い針の指す値が8,800mを超えた頃、太陽が昇り始め、私たちの冷えて疲れ切った身体を温めてくれました。頂上部は風が無く穏やかで、この世界の頂点を8度も踏む機会に恵まれた私は、この奇跡に圧倒されていました。世界最高峰という安全からかけ離れた場所にいるにも関わらず、チームメートとここで共有する時間をじっくりとかみしめました。私にとって11回目のシーズンとなったエベレスト山への挑戦。それは、どんなに慎重に準備をしたとしても、どんなに専門知識が豊富でも、そしてどんなに技術的に優れたツールを駆使したとしても、この山頂は短時間しか過ごすことのできない場所であり、そしてスキルのみならず運が良くなければ到達することのできない場所なのだということを教えてくれました。本当の打ち上げは、チーム全員がベースキャンプに下りてから、さらにはあらゆる機材やゴミが取り除かれるまでは絶対に始まりません。そして、今こそがその瞬間です。さあ、お祝いしましょう!

エイドリアン・バリンジャー

レイダー・ビバーク 9000

Ref.:00.10105.06.45.45
ケース径:48.0mm
ケース厚:18.7mm
ケース素材:チタン
防水性:3気圧 / 30m
ストラップ:レザー、ピンバックル
ムーブメント:手巻き、65時間パワーリザーブ
仕様:時針、分針、スモールセコンド、中央の赤針は1回転につき高度3,000mを表示、サブダイアルは最高9,000mの高度および気圧(hPa)を表示、パワーリザーブインジケーター、日付表示、アルミニウム製双方向回転ベゼル、両面に反射防止加工を施したサファイアクリスタルガラス、スクリューケースバック、アプライドインデックス、夜光塗料が塗布されたインデックスと時針・分針、高度表示用の赤針、ストーングレー文字盤
価格:850,000円(税抜)

※2018年6月時点での情報です。掲載当時の情報のため、変更されている可能性がございます。ご了承ください。

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