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栄冠はフィンランドに。2018年度ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワード

 A.ランゲ&ゾーネが主催する「ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワード」は、今年で9回目を数えます。そして今回もまた、時計師の卵たちが豊かな創造力を発揮した応募作品が寄せられました。今回の課題は、音で時刻を知らせる機構を製作することでした。審査員たちは感心した様子で応募作品8点を一つずつ手に取り、吟味しました。その結果、フィンランドのエスポー市で時計師養成学校に通う若干22歳のオットー・ペルトラさんのリピーター搭載時計「オスティナート」が栄冠に輝きました。ペルトラさんには賞金1万ユーロが贈呈されます。

  2018年4月に、ランゲ本社の工房で開催されたワークショップで発表されたウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワードの課題は、「ハンマー打ち機構の設計と製作」でした。それから半年間、ドイツ、フィンランド、フランス、日本、オランダおよびスイスの時計師養成学校から推薦された8名の才能豊かな時計師の卵たちが、その課題に取り組みました。

 応募作品が出揃った2018年11月末、審査員4人が集まり作品を分析し評価しました。審査員団には、ランゲ商品開発責任者のアントニー・デ・ハスのほか、時計専門ジャーナリストのギスベルト・ブルーナー氏とペーター・ブラウン氏、そしてドレスデン数学・物理学サロン所長のペーター・プラースマイヤー氏が名を連ねます。

 活発に意見が交わされた後、審査員団は満場一致で、15分ごとにメロディーを変えて打鐘するリピーター搭載時計「オスティナート」を優勝作品に決定しました。製作したのはフィンランド・エスポー市で時計師養成学校に在学中のオットー・ペルトラさんで、コンテスト応募作品が満たすべき4つの要件すべてにおいて秀でた技能を示しています。

 ムーブメントは独創性、機能性、手仕事の質の高さ、美観のどの点においても傑出しています。特に素晴らしかったのは、6つのゴングを組み込み、音量豊かに非常に心地よい音の組み合わせで時刻を知らせる打鐘の完璧さです。このように革新的な構造のリピーターを思いついたのは、ペルトラさんが音楽一家という環境に育ったことと無縁ではないでしょう。作品名にもそれを窺うことができます。「オスティナート」は、曲の中であるリズムまたはメロディーを繰り返し演奏することを意味する音楽用語なのです。

※写真上:作品を評価する審査員たち(左から)ギスベルト・ブルーナー、ペーター・ブラウン、アントニー・デ・ハス、ペーター・プラースマイヤー

 審査員団は、応募作品を審査しながら着想を得ることも多々あり、とりわけ応募作品8 点すべての創造性の豊かさについては、総じてこれまで以上のレベルであったと賞賛しています。提出された作品は、堅実なだけではなく、課題が難しかっただけに予想もしなかった意表を突くような興味深い斬新なアイデアで作られたものばかりでした。

 今年は、優勝作品以外にも平均以上に優れた2作品に、特別に賛辞が贈られました。この2人の応募者が作ったムーブメントは、それぞれに意外なアイデアを巧みに具体化した完成度の高さで審査員をうならせました。

 その一つは、ドイツのプフォルツハイム金細工師養成学校の時計技能士課程に通うリンダ・ホルツヴァルトさんの作品です。音でパワーリザーブ残量を知らせるというアイデアで傑出しているだけでなく、この機構に組み込まれた遊星歯車も自分で設計したという力作です。彼女の作品では特に、アイデアが一つ残らずきちんと時計に反映されている点が高く評価されました。自分で設計したラックと手作業でギョーシェ模様を施したダイヤルなどの装飾要素が、時計を最後まで丁寧に作り上げた完成度の高さを物語ります。

 同様に審査員を感心させたのは、東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジに在籍する飯塚雄太郎さんの任意に設定した温度を音で知らせるというアイデアです。飯塚さんは、かつて存在したある懐中時計からこの着想を得て、バイメタル構造の機構を設計しました。ベースムーブメントの構造には通常のものと大きな違いが見られます。これは日本文化を色濃く反映した結果です。音を出すためにハンマーが叩く外周リングを、かつて日本でドイツ人地質学者によって発見された石材(サヌカイト)で作ったのです。

 SIHH ジュネーブサロン開催中の2019年1月15日夜、国際記者会見の席上でランゲCEO のヴィルヘルム・シュミットがコンテストの結果を発表しました。シュミットCEOは受賞者への祝辞の中で、ウォルター・ランゲの遺志を継いでこのコンテストを継続するために長年にわたって審査員を務めてくださる方々に謝意を表するとともに、応募者と応募者を推薦してくださる時計師養成学校の協力にもお礼の言葉を述べました。

※2019年2月時点での情報です。掲載当時の情報のため、変更されている可能性がございます。ご了承ください。

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