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2025新作 ロボットであった時代が、かつてあった…。チャペック「アンタークティック・ラトラパント “R.U.R.”」

 2025年の新作として、チャペックが「アンタークティック・ラトラパント “R.U.R.”」を発表しました。

 いつの日か、ロボットが私たちの生活を支配する時代は来るのでしょうか? それとも、チャペックの“Rare People(稀なる人々)”は、その運命を回避できるのでしょうか。その答えは、グレーにメタライズ加工されたサファイア製ダイヤルの下で展開するメカニズムに遊び心あるアニメーションを添えた新作「アンタークティック・ラトラパント “R.U.R.”」に隠されているかもしれません。

 クロノグラフを作動させると、ロボットの目の色が変化します。スタートボタンを押すと黄色に(映画「移動都市/モータル・エンジン」のシュライクを想起させる色)、ストップすると赤、リセットで青に変わるのです。

 ダイヤルをよく見ると、従来のアンタークティック・ラトラパントとは異なるディテールが見えてきます。白いクロノグラフ針、白い先端を持つ青色アルミ製のラトラパント針。外周のクロノグラフ秒目盛や2つのインダイヤルには「XX」記号が並びます。これは、このモデルのために考案されたロボット語で、「プレデター」シリーズのヤウージャ文字(カウントダウンでおなじみ)をベースに、CEOザビエルの「X」を遊び心で取り入れたものです。ロボットの頭部はチャペックのパートナーであるMD'Artが製作したチタニウム製ミニチュアで、切削、手仕上げ研磨、レーザー・エングレービングが施され、3色のネオンカラーで一点ずつ手作業でペイントされています。

「2021年にアンタークティック・ラトラパントを発表した際、ある株主から『メカニズムの美しさを称えるためにロボットを組み込んではどうか』という提案を受けました」と、チャペックのCEO、ザビエル・デ・ロックモーレルは語ります。「美の探求は当社の時計作りの哲学の中心であり、常に新しいアプローチを模索しています。美的要素と機械的要素を融合させるロボットのアイデアは魅力的でしたが、その着想にはさらに深い背景がありました」

ロボット誕生から1世紀…

 チャペックのチームは、「ロボット」という言葉が、ちょうど100年前に別の“?apek(チャペック)”姓の人物によって世界に広まったことを知り、このコンセプトに引き込まれました。チェコの知識人カレル・チャペックは、20世紀初頭に台頭した科学的唯物論に強い懸念を抱き、1921年に戯曲「R.U.R. - ロッサムの万能ロボット」を発表。工場の組立ラインで働くために造られた人造人間が、やがて人間に反乱を起こすというストーリーで、科学と技術がもたらす非人間化への警鐘を鳴らしました。この戯曲は2年以内に30言語に翻訳され、現在スイス・イヴェルドンのSF博物館に初版本が収蔵されています。

 初期原稿ではラテン語の“labori”を用いていましたが、兄ヨゼフの提案でチェコ語の“roboti”に変更。これが英語の“robot”として定着しました。もともとは1839年のオックスフォード英語辞典に「中欧の農奴制(小作料を強制労働で支払う制度)」として記録されていましたが、カレル・チャペックの作品によって、今日のSF作品に登場する人型機械の意味が確立し、「ターミネーター」や「ブレードランナー」といった未来像にもつながっています。100年後の今、我々は自動化、人工知能、クラウドによる支配、トランスヒューマニズムの倫理など、カレル・チャペックが直面したのと同じ本質的な問いを抱えています。


機構を“裏返す”美学

 クロノード社のジャン=フランソワ・モジョンと共同開発されたチャペックのキャリバーSHX6は、ラトラパント・クロノグラフ機構を通常とは逆にダイヤル側に配置し、その美を正面から見せます。中央のトライポッド・ブリッジは特許取得のサテライト式ミニット・カウンターとラトラパント機構を固定し、12時位置と6時位置にはクロノグラフとラトラパント用のコラムホイールがそれぞれ鎮座。水平クラッチの噛み合い、クランプの動き、2つのコラムホイールの連動など、すべての動作が観察できます。

 特にR.U.R.では、ロボットの目の色変化が機構の動きに連動しており、造形美と機能美が融合。ロボットはクロノグラフのコラムホイール上に設置され、操作ごとに目の色が変化します。この仕組みの実現には、頭部の仕上げや発色、取り付け精度など、細部にわたる試行錯誤が必要でした。

機構の中の“隠れた機構” ― アイソレーター

 ラトラパントは、2本のクロノグラフ秒針の一方を瞬時に停止させ、再度同期させる高度な複雑機構です。R.U.R.には、両方の秒針を摩擦なく完全に切り離す「アイソレーター」が搭載され、計時の乱れを最小限に抑えます。これはチャペックのラトラパント構造における進化形といえます。


美の増幅

 チャペックのキャリバーは熟練の手仕上げで知られ、ミラー・ポリッシュされたスクリューヘッドやコラムホイール、面取りされたレバーやブリッジと、マットサンドブラストの地板とのコントラストが光の遊びを生み出します。裏面にはリサイクルされた5Nローズゴールド製ローター、ビーズブラスト仕上げのブリッジ、サーキュラー・サテンやブラックポリッシュのパーツなどが配され、シングルバレルで約60時間のパワーリザーブを確保。42.5mmケースと一体化したブレスレットは、ヘアライン仕上げと鏡面のCリンクを組み合わせています。


発売情報

 77本限定の「チャペック アンタークティック・ラトラパント “R.U.R.”」は、2025年9月5日より、世界中のチャペック指定販売店、ジュネーブのチャペック・ブティック、およびczapek.comで販売中です。お届けは2025年9月から12月の予定となっています。

Antarctique Rattrapante R.U.R.
アンタークティック・ラトラパント “R.U.R.”

ケース径:42.5mm
ケース厚:10.5mm(グラスボックスを含むと15.3mm)
ケース素材:ステンレススティール
防水性:120m
ストラップ:リンクがモダンな「C」を描くステンレススティール製ブレスレット、独自の「イージーリリース」システム、ラバーストラップが付属、ご要望に応じてカーフストラップ購入可
ムーブメント:自動巻き、Cal.SXH6(自社製)、約60時間パワーリザーブ、毎時28,800振動(4Hz)、49石
仕様:時・分・秒(スモールセコンド)表示、スプリット・セコンド モノプッシャー・クロノグラフ、ラトラパントON/OFF表示、ロボットの頭部でクロノグラフの作動状態を表示(作動中:イエロー、停止中:レッド、リセット中:ブルー)、オープンワークダイヤル、シースルーケースバック
限定:77本
価格:14,850,000円(税込)

※2025年9月時点での情報です。掲載当時の情報のため、変更されている可能性がございます。ご了承ください。

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