SIHH 2017新作 「レ・キャビノティエ・セレスティア・アストロノミカル・グランド・コンプリケーション 3600」
ヴァシュロン・コンスタンタンが、創業260周年のために創作された57ものコンプリケーションを搭載する世界で最も複雑で威容を誇る時計「リファレンス 57260」によって拓かれた道をたどり、「レ・キャビノティエ・セレスティア・アストロノミカル・グランド・コンプリケーション 3600」を発表しました。完全に新しい構造を採用するこの機械式時計の傑作は、ヴァシュロン・コンスタンタンの挑戦によって機械式時計の歴史に足跡が記され、新たな時計製造に向けての重要な礎が築かれることになった有名なユニークピース「リファレンス 57260」の流れを汲むものです。白紙の状態からの開発に5年、一人のマスター・ウォッチメーカーが専任で取り組み、設計に2年を要して誕生した唯一無二の「レ・キャビノティエ・セレスティア・アストロノミカル・グランド・コンプリケーション 3600」は、両面の文字盤で23種類の複雑機構を表示します。この高級時計に実現された驚異の “天体現象” は、これまでで最も複雑なものであり天文時計の誇らしい系譜の継承者であることを如実に示しています。天体を研究する天文学は、時計学とも密接に結びついています。天体の起源や進化、固有の性質などの解明を目指すのが天文学なら、時計学は、時の経過や星々の間の絶え間ない関係を把握して、機械的に表現すべく懸命に努めます。そうした挑戦は、それぞれが独立した輪列で作動する常用時、太陽時、恒星時の表示が組み合わさったこの時計で成果をあげています。
514個の部品を厚さがわずか8.7mmのムーブメントにすべて統合し、20以上もの機能を司り、なおかつ3週間ものパワーリザーブが備わるヴァシュロン・コンスタンタンの新しいキャリバー3600は、まさに小型化と精密機械技術の驚くべき快挙です。それにとどまらず、天文コンプリケーションの分野でヴァシュロン・コンスタンタンが培った専門技術もまた遺憾なく発揮されていす。その専門技術は19世紀後半に遡り、永久カレンダーとムーンフェイズ表示、恒星時表示を併せ持つ当時の懐中時計や、連続作動均時差表示を装備した1914年の時計などに見て取れます。近年では、2005年発表の「トゥール・ド・リル(16種類のコンプリケーショ搭載)」、2015年発表の「リファレンス 57260(57種類のコンプリケーション搭載、世界で最も複雑な時計)」があり、それらの注目すべき業績が天文の分野のエキスパートたることを見事に証明しています。
最高峰の時計技術が集約されたこのユニークピースは、数多くの天文コンプリケーションが信じがたいほどわずかなスペースに組み込まれ、そこには膨大な知識と計算、微妙な調整が表現されています。その魅力的な機能の中でまず注目される特徴的な機能は、常用時、太陽時、恒星時という3つの時間表示です。これらは、個々に独立した輪列で作動し、太陽関わる全機能を司る “回帰” も含まれます。
「常用時」(標準時)は、先端に丸く抜いたモチーフを配した2本のホワイトゴールド製の針により、表の文字盤で従来の時計と同じように読み取ります。常用時とは、太陽は1年を通じて一定の速度で赤道の周りを移動し、24時間毎に1周すると均等に定めた一種の仮定の理論に基づく「平均太陽時」と普通は理解されています。このような便利で伝統的原理では、1年は365.25日に、1日は24時間に、1時間は60分にそれぞれ分割されます。
常用時に対して実際の「太陽時(真太陽時)」は、1日を通じて太陽の目視可能な軌道に基づいており、所定の場所と時間で計測された時角によって表されます。1年の日によってこの「真太陽時」と「平均太陽時」との間に最大+14分から-16分までの差が生じ、両者が一致するのは1年で4回だけです。このような不一致が起こるのは、地球が周回す公転軌道が円ではなく楕円をしていて、太陽もその軌道の中心には位置していなく、さらに地球が軌道を移動する速度も一定ではなく、地球の自転軸も周回軌道面に対して傾いとう事実によります。
星空を仰ぎ見て
3番目の「恒星時」は、この時計の裏面で読み取ります。恒星時とは、理論的には、地方子午線から観察された恒星の見かけの動きに対して計測される地球の自転に基づく天文学的な時間スケールと見なされています。恒星時と平均太陽時(常用時)との差は1日で約4分あり、恒星時での24時間は、平均太陽時の23時間56分4秒に相当します。この時計の恒星時の時と分は、2枚のサファイアクリスタルを重ね合わせた独創的で巧妙な方法で表示されます。下のサファイアクリスタルは天球を描いた背景を成し、恒星時のミニッツトラックと基本方位が配されています。上に置かた方のサファイアクリスタルには、星座や天体の赤道(白い楕円)と黄道(赤い楕円)が描かれ、黄道は地球から見た太陽の年間の通り道を示しています。このランベルト投影法による図は、北半球における星座に対応する、真正の科学的な地図です。
回帰輪列による連続作動均時差表示
「常用時」と「太陽時」の差を計測して表示するために、この時計には複雑で巧妙な「均時差」機構が装備されています。しかも均時差表示は、腕時計ではめったに見られない「連続作動」というタイプで、カットアウトした太陽のモチーフで飾っピンクゴールドの分針が常用時の針と同軸に据えられ、それと常用時の時針によって太陽時が常に同時に表示される仕組みになっています。一般的な均時差表示では、+14から-16分の目盛りを配した補助的なセクターを移動する針で示され、太陽時を確認するには頭で少々計算する必要があります。この連続作動均時差表示の場合、製作は一段と複雑になりますが、太陽時と常用時が一目で判読できるのです。ヴァシュロン・コンスタンタンはその正確さや精度を確保するために、地球が太陽の周りを完全に一周するのにかかる時間で、365.2421898日に相当する “回帰年” をシミュレートした回帰輪列にその調整を託しました。
時間と潮位
このユニークピースはダブルフェイスの文字盤に23種類の複雑機構を表示します。スレートグレーに彩られた表側の文字盤には、15種類のコンプリケーションが巧みに配置され、常用時と太陽時(連続作動均時差表示)が3 本の同軸針から読み取れるだけでなく、永久カレンダーと高精度ムーンフェイズ表示、そして、潮位と地球-月-太陽の位置関係を示す3D描画とを組み合わせた素晴らしい潮汐表示が配されています。潮汐は物理法則に支配され、これら3つの天体の間で働く引力や遠心力によって変化します。
これからやって来る時がいわば “メモリー” にプログラムされている永久カレンダーは、グレゴリオ暦の不規則なカレンダー通りに合わせて正確な表示を行い、人為的な修正は400年毎に1日しか必要がありません。この永久カレンダーでは、曜日、月、閏年の周期が窓で示され、サーペント型の針によるポインターデイトで日付が示されます。
エレガントで魅力的な高精度ムーンフェイズ表示は、122年間で1日分の修正しか必要がありません。このムーンフェイズ表示は、2枚重ねたディスクを利用して行われ、レーザーエングレービングで本物の満月の姿を再現した月の満ち欠け、デイナイト、前回の満月から次の満月までを日数で表す月齢が読み取れます。こうした貴重な複雑機構を補足するのが日の出・日の入りの時刻表示で、各目盛りを移動する細い2本の針で示され、6時位置には昼夜の長さもわかる特別なゲージが置かれています。高級時計の分野では稀にしか見られないこうしたコンプリケーションの組み合わせをさらに充実させるのは、半円の中に並ぶ魅力的な数々の表示、すなわち黄道12星座、四季、至点、分点です。至点は夏と冬の2つがあり、夏至では昼が最も長く、冬至では最も短くなります。分点は春と秋が始まるころにそれぞれあり、春分と秋分では昼と夜の長さが等しくなります。
澄み渡る星空
時計の裏面にはもう一つの文字盤がセットされ、やはり価値のある天文コンプリケーションが豊富にアレンジされています。サファイアクリスタルのディスクを2枚重ねて作ったこの文字盤は、透明感にあふれる軽快なデザインや、特許登録された半透明の天空図のオリジナリティも特徴です。上側のサファイアクリスタルには北半球から見た星座が描かれ、これを縁取るアンスラサイトカラーのインナーベゼルには1年の12か月が示され、ゲージ状のパワーリザーブ表示も置かれています。この透明な文字盤にはまた、2つの楕円が描かれ、赤のラインに黄道が、白に天体の赤道がそれぞれ反映されています。星座の下に置かれたもう1枚のディスクは、周縁に恒星時の表示用の目盛りと基本方位が記され、アンスラサイトカラーの天球が天空図のシースルーの眺めを露わに見せています。さらに、この革新的な天空図から6時位置のトゥールビヨンが垣間見られるのも魅力的です。
精巧さと小型化を極める技術の偉業
この並外れた時計を動かす非常に複雑な専用ムーブメント、キャリバー3600は、全機能を一体化して盛り込む構想に取り組み始めてから外観に洗練された仕上げをもたらすまで、実に5年もの開発期間を要しました。機械式手巻きムーブメントは、3つの独立した輪列で3種類の異なる時間を表示する機能を含む20以上もの複雑機構が組み合わされているだけでなく、3連結された6個の香箱によって3週間も持続する驚異のパワーリザーブさえも備えています。このような多数の天文表示を正確に動かすとなると、相当なエネルギーが必要になるのは当然です。
ヴァシュロン・コンスタンタンは、長時間パワーリザーブを実現するために、2つのアプローチから同時に着手しました。エネルギー消費を抑える方法の模索と、動力源の大型化です。エネルギーの貯蔵と伝達を最も効率よく行えるように、香箱の主ゼンマイを頑強で延性にも豊むBioflex®合金で作り、インボリュート歯車の噛み合いを理想的なものにしました。さらには、6個の香箱に大量のパワーを確保する一方で、ムーブメントを可能なかぎり薄くしているのです。それらすべてを結集したムーブメントは、まさに小型化を極める偉業です。514個の部品は微妙に調整され、入念に装飾が施され、しかもムーブメントの厚さはわずか8.7mmしかありません。また、精度と規則性を強化するために直径の大きなテンワを採用したトゥールビヨンも備わり、直径45mmのホワイトゴールド製ケースの中にすっきり収まり、エレガントな表情を見せています。(※Bioflex®は登録商標で、ヴァシュロン・コンスタンタンに帰属するものではありません。)
また、23種類もの機能を視認性が極めて高く、見た目の調和が取れ、独創的なスタイルで表示したところにも、技術と美的デザインの双方で成し遂げたヴァシュロン・コンスタンタンの偉業が表れています。表側の文字盤はバランスの良い美しいレイアウトでまとめられ、そのムーブメントは、サファイアクリスタルのディスクで構成された裏面の表示を読み取りやすくするためにマット仕上げを施し、透明な石をセットしています。そして、ヴァシュロン・コンスタンタンの全コレクショと同様に、この「レ・キャビノティエ・セレスティア・アストロノミカル・グランド・コンプリケーション 3600」も、ジュネーブ・シールの威信を誇る品質保証を規定する厳格な諸項目に合致し、その認証取得しています。
星空へ手を伸ばして
特別な時計から成る「レ・キャビノティエ」コレクションに仲間入りしたこの天文コンプリケーションのスーパーウォッチは、ジュネーブで18世紀に活躍した “キャビノティエ” の伝統を今に伝える、典型的な例といえます。キャビノティエとは、時計製作の高度な専門技術を身に付けた職人を指し、彼らは屋根裏部屋の工房で、世界中の著名な顧客たちのために考案された、特注よる正真正銘の傑作時計を創作していました。ヴァシュロン・コンスタンタンは、優れた時計技術と特別な顧客サービス、徹底したパーソナライズを一つに融合するキャビノティエと同じ精神を受け継ぎ、その傑出した哲学を保持し続ています。稀少性を突き詰めた「セレスティア・アストロノミカル・グランド・コンプリケー 3600」は、1点のみの限定モデルです。アリゲーターレザーストラップとホワイトゴールドのピンバックルが組み合わされ、寄木細工で装飾された豪華なボックスが付属します。
レ・キャビノティエ・セレスティア・アストロノミカル・グランド・コンプリケーション 3600
Ref.:9720C/000G-B281
ケース径:45.0mm
ケース厚:13.6mm
ケース素材:18K ホワイトゴールド
防水性:3気圧 (約30m)
ストラップ:ブラックのミシシッピ・アリゲーターレザー、18K ホワイトゴールド製ピンバックル
ムーブメント:手巻、Cal.3600(自社開発・製造)、毎時18,000振動、約3週間パワーリザーブ、64石
仕様:ジュネーブ・シール取得、時、分、永久カレンダー、デイ/ナイト表示、高精度ムーンフェイズ、月齢、連続作動均時差表示、日の出・日の入り、昼夜の長さ、四季、至点、分点、黄道12星座、潮位表示、太陽-地球-月の位置関係(合、衝、矩)、北半球の透明な天空図(銀河表示、黄道および天体の赤道付き)、恒星時の時と分、トゥールビヨン、3週間パワーリザーブ(6個香箱)、パワーリザーブ表示、スレートカラーオパーリン文字盤、18K ゴールド製のアプライド・インデックスと18K ゴールド製の針、サファイアクリスタルのシースルーケースバック、専用ボックス、巻き上げ装置と修正ピンとルーペが付属、裏面に≪Piéce unique≫と≪Les Cabinotiers≫の文字を刻印
限定:世界限定1本 (※取扱はヴァシュロン・コンスタンタンのブティックのみ)
搭載コンプリケーション・リスト
カレンダーおよびムーンフェイズ(平均太陽時輪列)
1.窓による曜日
2.針による日付
3.窓による月
4.窓による閏年
5.永久カレンダー
6.デイ/ナイト表示
7.高精度ムーンフェイズ
8.月齢
太陽機能(回帰輪列)
9.均時差
10.連続作動均時差
11.日の出時刻
12.日の入り時刻
13.昼の長さ
14.夜の長さ
15.四季、至点、分点、黄道12星座
潮汐表示
16.潮位表示
17.太陽-地球-月の位置関係(合、衝、矩)
天空図(専用の恒星時輪列)
18.北半球の天空図(銀河表示、黄道および天体の赤道付き)
19.恒星時の時
20.恒星時の分
その他機能
21.トゥールビヨン
22.3週間パワーリザーブ(6個香箱による)
23.パワーリザーブ表示
※2017年1月時点での情報です。掲載当時の情報のため、変更されている可能性がございます。ご了承ください。