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ダヴィッド・カンドー氏のバイオグラフィーと新作「1740 ハーフハンター トゥールビヨン」


時計師、ダヴィッド・カンドー


 緑色や茶色の微妙な色合いや霧と雪に交互に包まれるジュー渓谷の見事な自然風景の中で、ダヴィッド・カンドーは祖父や父の代から続けられてきた時計作りの技法を継承しています。時計作りの巨匠たちの長い伝統の中に育まれたダヴィッドは、昔ながらの時計作りの技法を今も実践している、非常に数少ないスイスの独立時計師の一人であるといえます。


 伝統に深く根ざしていながらも、ダヴィッド・カンドーは単純に過去のものを繰り返し作ることを良しとはしません。伝統的な技法を基盤としながらも、技術をさらに洗練させようと、徐々に進化させることを目標とし、詩的で哲学的な感情を機械時計の技術を通して現代的に表現しようとするのです。彼の作品に見られる一見、伝統的な趣の背後には、未だかつて実現されたことのもないどころか、夢見られたことすらないようなクリエーティブなイノベーションが隠されていて、それらは違いの分かるコレクターの想像力と理解力をくすぐり、刺激するのです。彼の作品の一つ一つは、最高の技術を駆使した巧妙な時計であるだけでなく、時を測る芸術に関する彼の非常にパーソナルなビジョンの表現でもあるのです。



心と魂


 何代にもわたる時計作りの経験と知識を持つ家系の中に生まれ育ったダヴィッドは、家族の伝統を踏襲するべく、15歳の若さで時計作りの道に専念することを決心しました。その後、ジャガールクルトの見習い時計師として、時計界の中では伝説的な存在である、ギュンター・ブルムライン氏の指導を受けました。ブルムライン氏が自分の制作哲学を表すものとして度々口にした言葉は、「時計は心と魂に語りかけなければならない」というものでした。ダヴィッドも自分の作品の全てにこの鉄則を適用しています。堅い信念に基づき、長い修行の積み重ねを通して取得した技術を駆使して、ダヴィッドの手によって作られる作品は、真の時計作りにとって不可欠な厳密さと正確性、完璧を常に求める彼の精神を具現化したもので、だからこそ作品は魂を持ったものとなるのです。


 25年以上にわたって、ダヴィッド・カンドーは最高級腕時計の中でも最も名高いブランドのためにいくつもの作品を完成させてきました。それらの中には伝統的なものもあれば、伝統的な機械式時計を根本的に見直すような複雑な未来派の時計も含まれます。ダヴィッドは、ジュー渓谷の伝統に対する忠誠心のため、やや古風なものを好む傾向があると自分でも認めますが、同時に、新しい技術や素材に対して情熱的な好奇心も抱いています。アンテイーク時計の修復にも長く関わってきたため、時計作りの歴史と技法に関する深い知識を持ち、さらなる資格や専門技術を身につけることによって時計師としての腕をさらに磨いてきました。そして、同じ時期に、ダヴィッドは自分にとって理想の時計と思われる作品のスケッチや設計図を絶え間なく描き続けたのです。それは伝統的な時計作りに関する自分の考えを21世紀のコンテクストの中で考え直すという野心から来るものでした。



1740 トゥールビヨンの発表


 16年にわたる熟成時期の成果がとうとう2017年に世に出されることになりました。ダヴィッドの傑作、「1740」が2017年のバーゼルワールドでお披露目されたのです。1740といえば、ジュー渓谷に時計作りの伝統が最初に芽を出した年。ダヴィッドは徐々に進化する作品シリーズの最初の一本としてこの作品を発表したのです。時計作りに対する彼のバーソナルなビジョンがその設計と製作のあらやるデイテールに表されています。伝統的な技術を使った完成度を保ちながらも、現代技術の可能性をフルに活用して斬新な技術革新を発案し、設計、製作した作品です。このような原則に基づいた作品にふさわしく、時計の修飾や仕上げ、調金や組み立ては全て手作業によるものとなっています。


 ダヴィッドが住むスイスのル・ソリアの村は牧地と森に囲まれ、近くには湖があります。それは時計作りのインスピレーションの源となるような、静謐と安らぎの調和にみなぎる環境といえます。壮大な自然環境へのオマージュとして、ダヴィッドは特別なギヨシェ模様を開発しました。そのモチーフは周りの風景を反映すると同時に、彼の作品の心を表すものとなっています。「ポワント・ド・リズー」と呼ばれるモチーフは一見、シンプルなものですが、非常に高度な技術を要するもので、彼の工房の周りのリズーの森を空から見たときの幾何学的模様を表現したものです。また、コート・ド・ソリアと呼ばれる珍しい装飾は、手作りでしか実現できないもので、熟練した腕と特殊な工具を使います。

 熊を表したダヴィッドのロゴも象徴的なものです。クマは、一つにはカンドー家のあだ名でもあるのですが、一方で、昔からル・ソリアの周りの森の中に生息していた動物でもあります。それは、時計が時計師の手によって作られた時代、商業化や大量生産を知らない遥か昔の時代のことです。


 新作「1740」を世に送り出すと同時に、ダヴィッドはD. Candauxという名前のもとで制作ことを決めました。ブランド名ではなく、実存する人の名前であるという気持ちがこもっています。また、イニシャルの「D」は父のダニエルとのコラボを象徴してもいます。ダヴィッドの父はその一生のほとんどをジュネーブの著名なメゾンの複雑時計を作ることに捧げてきた人ですが、今はその知識と経験を息子の時計作りに貢献しているのです。



自宅と工房


 今も昔も変わらず、周囲の環境は人の職や生き方に深い影響を与えるものです。最高級の腕時計作りの揺りかごと言われてきたジュー渓谷の中心部に住むダヴィッド・カンドーの工房はこの谷の伝統的な生き方を継承するものです。妻のキャロリーヌと二人で18世紀の歴史的な建物を完璧に改築・修復作業しましたが、それは想像を絶するプロジェクトでした。今やこの家の地階はカンドー家族の住居となり、上の階と屋根裏は時計作りの工房となっています。工房の窓からは美しい風景を見渡すことができ、19世紀の木製の作業机が未だに使われています。それはジュール・セザー・キャプトが、レオン・オーベールやルイ・エリゼ・ピゲとともに、当時もっとも複雑な時計と言われた「アストロノミーク」、別名「ラ・メルヴェユーズ」と呼ばれた伝説的な作品を製作した作業台と同じものなのです。1874年に制作が開始されたこの作品はその複雑さゆえに、開発に4年の年月がかかり、1878年になってようやく完成されたものなのです。

1740 Half Hunter Toubillon

ケース径:43.00mm
ケース厚:12.60mm
ケース素材:グレード5チタン
防水性:30m
ストラップ:大きめのウロコのワニ革、ピン・バックル
ムーブメント:手巻き、55時間パワーリザーブ、毎時21,600振動、47石
仕様:ドーム型の時間と分表示、9時位置にトゥールビヨンケージによる秒表示、押すことによって解除される「シークレット」リュウズ、サファイアグラス製の半ドーム型風防

※2018年4月時点での情報です。掲載当時の情報のため、変更されている可能性がございます。ご了承ください。

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